歯科医院を開業したばかりで、スタッフが少数の場合には、毎月の給与計算にエクセルを使っているオーナーの方が多いかもしれません。エクセルは手軽で便利なツールですが、計算に注意を払わないと、給与を過剰に支払ってしまったり、給与や保険料、税金の未払いが毎月発生してしまう可能性があります。
今回は、エクセルで給与計算をするにあたって、気をつけるポイントをまとめました。
目次
1. 各種保険料率・税率の改正を反映する
2. 残業代の計算を正しく行なう
3. 標準報酬月額の変更を反映する
・社会保険料の計算
・標準報酬月額の決定
・標準報酬月額の変更をする場合に届出を行なう
・届出後に標準報酬月額を計算に反映
4. 算定基礎届・労働保険の年度更新・年末調整のエクセルファイル外の作業も正確に
5. 履歴の管理やファイル破損時のバックアップをとる
まとめ
・給与計算や給与明細発行をカンタンに行う方法
1. 各種保険料率・税率の改正を反映する
スタッフの給与計算においては、所得税、住民税、雇用保険料、社会保険料（健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料）などの項目があります。これらの控除金額の算出に用いる料率は、改正時期が異なります。料率の変更を忘れてしまうと、給与未払い・過払いや保険料や税金の未払い・過払いにつながります。修正には時間と手間がかかるため、保険料率・税率の改正情報をしっかりキャッチして計算に反映するようにしましょう。
2. 残業代の計算を正しく行なう
スタッフの給与形態によって、残業代の計算方法が異なります。時給制のスタッフの場合、時給単価に割増率を掛けるだけで、比較的簡単に計算ができます。（ただし、深夜労働など、時間外労働が特別な場合には注意が必要です。）しかし、月給制の常勤スタッフなどの場合、計算方法は少し複雑になります。月給制の場合、1時間あたりの賃金の計算方法や含めなくてよい手当などを理解せずに給与計算を行うと、本来よりも人件費が膨らむことがあります。また、正しい残業代の計算方法を知らずに計算を行うと、残業代が未払いになるリスクもあります。訴訟リスクもあるため、正確な計算方法を理解し、適切に計算することが大切です。
3. 標準報酬月額の変更を反映する
社会保険料の計算
社会保険料は、「標準報酬月額」という給与の平均額に保険料率を掛け合わせて計算します。保険料は会社と従業員が折半で負担するため、給与計算の際には、保険料額の半分を控除する形で計算します。
標準報酬月額の決定
標準報酬月額の決定方法は大きく分けて次の2パターンがあります。
・4月～6月までの3ヶ月間の給与額に応じて、その年の9月分の保険料から変更
・固定的賃金（基本給、交通費等の毎月一定額が決まって支払われるもの）に大幅な増減があった場合に、給与の変更があった4ヶ月目の保険料から変更
標準報酬月額の変更をする場合に届出を行なう
スタッフの標準報酬月額が変更された場合、日本年金機構に届け出をすることが必要です。しかし、届け出を忘れるケースも多く見られます。届け出をしなかった場合、日本年金機構の調査時に指摘され、過去2年間遡って保険料を計算し直し、追納する必要があります。本来は会社とスタッフが折半で負担する社会保険料ですが、従業員から過去の未払い保険料額を徴収するのは難しいため、会社が全額負担し納付することになります。このような問題を回避するためには、正確な手続きを遵守することが重要です。
届出後に標準報酬月額を計算に反映
反対に、届出はしたものの、エクセルファイルの標準報酬月額の変更を忘れているケースもよくあります。このような場合は、届出とエクセルファイルの両方を変更することが重要です。両方の変更をセットで行うことで、問題を回避しましょう。
4. 算定基礎届・労働保険の年度更新・年末調整の
エクセルファイル以外の作業に手間取るケースもあります。例えば、算定基礎届の作成や労働保険の年度更新、年末調整業務など、年に一度の作業を手書きで行うことが多いです。手書きによる書類作成は時間がかかるばかりか、慣れない作業のためにエクセルにある情報の転記ミスも起こりやすくなります。年に一度の業務でも、エクセルファイル外の作業を正確に行うように心がけましょう。
5. 履歴の管理やファイル破損時のバックアップをとる
給与計算にはエクセルを使う場合、過去のデータを誤って書き換えてしまう危険性があります。さらに、予期せぬパソコンの故障やファイル破損によって、データが失われる可能性もあります。ファイル履歴の管理に加え、毎月の業務としてバックアップをとる習慣を身につけることが重要です。
まとめ
エクセルを利用した給与計算はコストが抑えられ、手軽で便利ですが、注意すべき点があることは忘れてはいけません。特に、社会保険への加入者やスタッフ数の増加に伴い、手間が増えることもあります。そんなときは、給与計算ソフトの導入を検討することをおすすめします。OneDentalは、歯科に特化した人事労務システムである、歯科クリニックでの人事労務を効率化できますので、一度試してみてはいかがでしょうか。
