給与計算
Mar 12, 2023

給与計算のやり方まとめ!正しい計算方法を分かりやすく解説

歯科医院においても、従業員を雇用している場合は給与計算が毎月必要となります。正確な計算が求められるため、重要な業務の一つといえます。

給与計算では、従業員の勤怠や雇用契約に基づき、総支給額を計算する必要があります。また、社会保険料をはじめとする各種控除額も算出する必要があります。これらの計算を行い、総支給額から控除額を差し引いた差引総支給額(従業員の手取り額)を算出する必要があります。

本記事では、給与計算のステップに沿って、歯科医院での給与計算のやり方をわかりやすく解説します。また、給与担当者が知っておくべき基礎知識やポイントについてもまとめました。

目次


給与計算とは
給与計算のやり方
1. 総支給額の計算
2. 控除額の計算
3. 差引総支給額の計算
給与計算を始める前におさえておくべきポイント
賃金支払いの五原則の遵守
社会保険などの要件の確認
従業員情報、勤怠情報の管理
事業所所在地のルールの確認
給与計算を担当する際の注意点
労務のリスク
情報漏えいのリスク
税務のリスク
まとめ
給与計算や給与明細発行をカンタンに行う方法

給与計算とは

歯科医院においても、給与計算とは総支給額から各種控除を差し引き、従業員に実際に支払う給与額(手取り額)を計算する一連の流れを指します。

給与計算の計算式は、「総支給額 - 控除額 = 差引総支給額(手取り額)」です。各項目毎にルールや法律が異なるため、正しい知識を把握しておく必要があります。

現在では、給与計算ソフトなどが積極的に使われているため、一人ひとりの給与を個別に計算する機会は減少しています。しかし、従業員に適切に給与を支払ったり、正しく税金を納めたりするためには、給与担当者は正しい知識を理解しておく必要があります。

本記事では、歯科医院における給与計算の流れや注意点について解説します。給与担当者が知っておくべき基礎知識やポイントについてもまとめました。

給与計算のやり方

大まかな給与計算は以下のステップで進めます。

  1. 総支給額の計算
  2. 控除額の計算
  3. 差引総支給額の計算(手取り額)


ここでは、各項目で何を算出するのか、どのような計算式を利用するか詳しく解説していきます。

1. 総支給額の計算方法

総支給額の計算に必要な項目は以下のとおりです。

  • 勤務時間の算出
  • 割増賃金の計算
  • 各種手当の計算

勤務時間の算出は、その後の割増賃金の計算にも大きく影響するため、間違いのないように確認しましょう。

勤務時間の算出

歯科医院における給与計算では、従業員の総労働時間数や勤務状況、有給休暇の使用などを考慮し、手取り額を計算する必要があります。

基本給や賞与などの支給額が決まっている場合は、まず期間内の総労働時間数や所定労働時間の勤務状況、割増賃金の対象となる勤務時間を算出します。この際、有給休暇などの使用も適切に計算に含めることが必要です。

所定労働時間とは、歯科医院が設定している勤務時間のことを指し、法定労働時間とは1日8時間・週40時間までの勤務時間を指します。

歯科医院において所定労働時間が法定労働時間よりも少ない場合は、残業代の支払い範囲や金額については雇用契約に基づいて計算しますが、法定労働時間を超えた場合には規定の割増賃金を支払う必要があります。

割増賃金の計算方法や対象となる時間、条件については次の項目で詳しく解説していきます。

割増賃金の計算

従業員の総労働時間数が算出できたら、次に各種割増賃金の計算を行います。割増賃金を計算するためには、まず1時間あたりの賃金を算出します。

1時間あたりの賃金 = 月給 ÷ 1ヶ月の平均所定労働時間
月給 = 基本給 + 役職手当 + 資格手当など
※住居手当や通勤手当などは原則含まない
1ヶ月の平均所定労働時間 =
{ (365日 - 年間所定休日数) × 1日の所定労働時間数 } ÷ 12(ヶ月)

1時間あたりの賃金が算出できたら、その賃金をもとに次のように割増賃金を計算します。

割増賃金の計算式
割増賃金 = 時間外労働時間数 × 1時間あたりの賃金 × 割増率

割増賃金の計算には正確な知識と精度が必要です。また、法律やルールに則った正しい計算を行うことで、従業員に適切な賃金を支払い、労働環境を整備することができます。

それぞれの割増率は、以下の表を参考にしてください。

各種手当の計算方法

時間外手当以外に、歯科医院で任意に支給される手当があります。会社によって支給される手当の内容や金額は異なりますが、代表的なものとして以下があります。

代表的な各種手当

  • 通勤手当
  • 出張手当
  • 転勤手当
  • 役職手当
  • 資格手当

通勤手当は、月額15万円までが非課税(出張手当や転勤手当も必要であれば非課税)となっていますが、役職手当や資格手当は課税対象となります。

適切な給与計算を行って、従業員のモチベーション向上や生産性向上につなげてください。

2. 控除額の計算

総支給額を算出したら、それらの金額をもとに控除額を計算します。

各種保険料は会社が負担するものと従業員が負担するものに分かれますが、ここでは、従業員の給与から控除する分のみを解説します。

社会保険料の計算

社会保険は健康保険と厚生年金保険の2種類があり、保険料は会社と従業員で折半されるのが一般的です。また、健康保険は会社によって保険料が異なります。ここでは協会けんぽを例にして紹介します。

健康保険と厚生年金保険はどちらも次のように計算します。

社会保険料(健康保険・厚生年金保険)の計算式
保険料 = 標準月額報酬 × 保険料率 ÷ 2

標準月額報酬とは、その年の4〜6月の給与の平均額です。この計算には基本給・役職手当・残業代・通勤手当・家族手当などが含まれます。なお、年3回以下の賞与や臨時ボーナス、祝い金などは対象外です。

健康保険料の計算例
例:標準月額報酬が32万円で東京に事業所がある場合(保険料率9.81%)

健康保険料:320,000円 × 9.81% ÷ 2 = 15,696円

出典:全国健康保険協会「令和4年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます」

協会けんぽの場合、保険料率は各都道府県によって異なるため、協会けんぽのホームページを参考に事業所のある各都道府県の保険料率を確認しましょう。

厚生年金保険料の計算例
例:標準月額報酬が32万円の場合(保険料率は18.3% )

厚生年金保険料:320,000円 × 18.3% ÷ 2 = 29,280円

出典:日本年金機構「厚生年金保険料額表」

介護保険料の計算

介護保険料は40歳から64歳に課税される社会保険で、保険料は会社と従業員で折半となります。

介護保険料の計算式
介護保険料 = 標準報酬月額 × 保険料率 ÷ 2

以下の例題は協会けんぽの保険料率をもとに算出しています。

介護保険料の計算例
例:標準月額報酬が32万円の場合(保険料率1.64%)

介護保険料:320,000円 × 1.64% = 5,428円

出典:全国健康保険協会「協会けんぽの介護保険料率について」

雇用保険料の計算

雇用保険料は事業内容によって変動しますが、一般企業の場合、労働者負担は5/1,000です。

雇用保険料の計算式
雇用保険料 = 賃金 × 雇用保険料率

なお、雇用保険料は2022年10月1日から引き上げられているため、自社の事業内容に対して雇用保険料率が正しく反映されているかを必ず確認しましょう。

雇用保険料の計算例
例:標準月額報酬が35万円で一般企業の場合(保険料率は5/1,000)

雇用保険料:350,000円 × 5/1,000 = 1,750円

出典:厚生労働省「令和5年度の雇用保険料率について」

所得税の計算

所得税とは、1月1日から12月31日までの所得にかかる税金のことです。

従業員の場合、毎月源泉徴収して医院側が個人に代わって納税しますが、これはあくまでおおよその金額であるため、1年間の所得税額が確定する12月に年末調整を行い、正確な所得税を算出します。

所得税を算出するためにはまず、所得税のかかる「課税所得」を計算する必要があります。課税所得は以下の計算式で求めます。

所得税の計算式(源泉徴収分)
給与(基本給 + 残業代など)-(社会保険料 + 雇用保険料)= 課税所得

上記の計算で求めた課税所得を「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」に照らし合わせて源泉徴収額を算出します。

所得税の計算例(源泉徴収分)
例:
・給与が32万円
・社会保険料は44,976円
・雇用保険料は1,600円

課税所得:320,000円 -(44,976円 + 1,600円)= 273,424円

所得税(源泉徴収)= 7,390円

出典:国税庁「令和5年分 源泉徴収税額表」

出典:国税庁「給与所得の源泉徴収税額の求め方

住民税の計算

住民税は前年の所得をもとに計算されます。

住民税の計算式と計算例
通知された住民税額 ÷ 12 = 1ヶ月の住民税額

住民税額は毎年5月に各自治体から納付書で通知されます。納付書に記載された1年分の住民税額を12ヶ月で割って毎月の給与から差し引きます。

住民税の計算例
例:住民税額が6万円だった場合

1ヶ月の住民税額:60,000円 ÷ 12 = 5,000円

3. 差引総支給額の計算

上述の1. 総支給額から2. 控除額を差し引いた額が「差引総支給額」となり、従業員に実際に支払う給与(手取り額)です。

差引総支給額の計算式
総支給額 - 控除額 = 差引総支給額

ここでは、前述した総支給額と控除計算方法を含めて、実際の計算例をご紹介します。

<給与計算の例>
・ 35歳 独身 20日勤務 1日8時間勤務(所定勤務時間160時間)
・ 基本給:23万円 標準月額報酬:28万円 医院の所在地:東京

(*1)所得税は総支給額から非課税手当や社会保険料等を差し引いた額に課税します。

種類 割増対象となる時間 割増率
法定時間外労働 法定労働時間である1日8時間
週40時間を超えた労働時間
25%以上
1ヶ月60時間を超える分の時間外労働
(2023年4月1日から適用)
1ヶ月60時間を超える分の時間外労働 50%以上
法定内残業 会社で定められた労働時間を超えているが、
労働基準法で定められた法定労働時間は超えていない分の残業
0%以上
深夜 22時から5時までの間の労働時間 25%以上
休日(法定) 法定休日(週1日)における労働時間 35%以上
休日(法定外) 会社で定めた休日(所定)における労働時間
(法定時間外に及ぶときは25%以上)
0%以上
所得税の計算式:
286,051円(総支給額)-13,000円(非課税手当)- 40,784円(社会保険料など)
= 232,267円(課税所得額)

算出した課税所得額を「給与所得の源泉徴収税額表(令和5年分)」と照らし合わせると、扶養親族等の数が0人であることから、課税所得額は5,890円となります。

まとめ

給与計算は、歯科医院において従業員への正確な給与支払いだけでなく、社内の労務管理や税務管理にも重要な業務です。

特に、手当の種類や支払い内容は歯科医院によって異なるため、手当の課税対象と非課税対象を正確に理解し、給与計算に反映する必要があります。

給与計算を担当するスタッフは、必要な知識を学び、常に最新情報にアップデートすることで、正確な給与計算を実施しましょう。

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